皆さまは「遺言書」にどのようなイメージをお持ちですか?
資産家の家庭で泥沼の遺産争いを行っている最中、、遺言書が見つかって一気に形勢が逆転、、!なんて展開をたまに昼ドラで見たりしますよね。
皆さまのイメージしている通り、遺言書がある状態とない状態で相続が発生した場合、財産分与や相続税に大きな影響を及ぼします。
今回は遺言書が持つ役割・必要性、作成時の注意点、円滑な作成を支援するための助成金について解説いたします!
◆遺言書の種類
遺言書には下記3種類が存在しますが、結論的には遺言には求められる記載要件が決まっており、自分で適当に作成しても「せっかく遺言を作成していたのに相続時に認められなかった!」などといったトラブルも懸念されます。よって、②の公正証書遺言にて公証人の確認、あるいは弁護士や税理士などの専門家から助言を受けたうえで作成することが推奨されています。
①自筆証書遺言
概要: 遺言者が自分で全文を書き、日付と署名をした遺言書。最も手軽に作成できる形式。
~メリット
・費用がかからず、自分一人で作成可能。
・手軽に修正や作成ができる。
~デメリット
・書式不備や記載内容の不明確さで無効になるリスクがある。
・紛失や偽造、改ざんのリスクがある。
・相続手続きの際に家庭裁判所で「検認」が必要。
※法改正による改善点
2019年の法改正で、財産目録は手書きではなくパソコンなどで作成したものを添付可能。
法務局で保管する「自筆証書遺言の保管制度」が開始され、紛失リスクが軽減。
⇒向いているケース
財産が比較的少額で、法定相続分通りに分配する内容でない場合。
費用を抑えて簡易に作成したい場合。
②公正証書遺言
概要: 公証役場で公証人が遺言者の意思を確認し、公正証書として作成する遺言書。専門家が関与するため、法的な有効性が高い形式。
~メリット
・公証人が関与するため、法的に無効になるリスクが低い。
・原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配がない。
・家庭裁判所での「検認」が不要。
~デメリット
・作成に手間がかかり、費用が発生する(公証人手数料)。
・証人2名が必要。
・遺産総額によって異なるが、10万円程度の費用を要する。
⇒向いているケース
・確実性を重視する場合
・相続人間で争いが予想される場合
・遺産が多額で分配方法が複雑な場合。
③ 秘密証書遺言
概要: 遺言者が作成した遺言書を封印し、公証役場で公証人に封印の事実を証明してもらう形式。
~メリット
・遺言の内容を秘密にできる。
・自筆でなくてもよい(内容をパソコンで作成可能)。
~デメリット
・内容の有効性は公証人が確認しないため、不備があると無効になる可能性がある。
・相続手続きの際に家庭裁判所で「検認」が必要。
・公証人の証明に必要な費用がかかる(数千円程度)。
⇒向いているケース
・遺言の内容を誰にも知られたくない場合。
・自筆証書遺言よりも信頼性を少し高めたい場合。
◆遺言書作成の必要性
そもそも遺言書がない状態で相続が発生した場合、自身の財産は誰に・どのように、分配されるのでしょうか。
結論的に、国が定める「法定相続人」に対し「法定相続割合」で分配されることになります。 よって、法定相続人以外の特定の誰かに財産を相続させたい希望がある場合は遺言書を作成する必要があります。
相談例)私には財産が4,000万円あります。 妻1人、子供2名が法定相続人となりますが、生前に妻とともに私の介護を尽力してくれた兄弟に財産を1,500万円渡したいと考えています。 遺言を作成しなかった場合と作成した場合で財産分与がどのように変わるのか教えて下さい
回答)
遺言書を作成しない場合法定相続分に基づいて財産が分配されます。兄弟には相続権がないため、財産は妻と子供で分配されます。
※法定相続分
妻: 1/2
子供2名: 残りの1/2を等分(各1/4)
分配結果
妻: 2,000万円(4,000万円 × 1/2)
子供: 各1,000万円(4,000万円 × 1/4)
兄弟: 0円(相続権なし)
★遺言書を作成する場合
遺言書で1,500万円を兄弟に遺贈する旨を記載することで、希望通りの分配が可能です。ただし、配偶者と子供には「遺留分」があるため、注意が必要です。
遺留分
遺留分は、相続人が最低限確保できる法定の取り分で、遺言書があっても侵害できません。
妻: 法定相続分の1/2(1/4 = 4,000万円 × 1/4 = 1,000万円)
子供: 法定相続分の1/2(各1/8 = 4,000万円 × 1/8 = 500万円)
遺留分を侵害しない範囲で、兄弟に財産を遺贈できます。
~分配例
兄弟: 1,500万円(遺言に基づく遺贈)
妻: 1,500万円(4,000万円 - 1,500万円 - 遺留分調整)
子供: 各500万円(残額を均等分配、または調整)
※もし遺留分を侵害する内容の遺言を作成した場合、妻や子供が遺留分侵害額請求を行うことで調整が求められます。
◆補助金概要
上記の通り、財産を法定相続人以外の特定の誰かに相続させたい希望がある場合、遺言書の作成が必要となることは理解できたかと存じます。
また遺言の有効性を確実にするためには②の公正証書遺言の作成を推奨いたしますが、デメリットとして数十万円程度の費用が発生いたします。
そこで、活用できるのが以下補助金です。
★補助金名:フリーウィルズキャンペーン2024
★詳細:遺贈寄付を促進するため、遺言書作成にかかる専門家報酬の一部を助成する取り組みです。主催は一般社団法人日本承継寄付協会で、2024年9月17日から開始されています。
★助成額: 遺言書作成に対して1件あたり10万円の助成金が提供されます。
★対象者: 10万円以上の遺贈寄付を検討している個人。少額からの寄付も対象となります。
★申請期間: 2024年9月17日から開始されており、詳細な終了日は公式サイトで確認が必要です。
★申請方法: 事前申請が必要で、公式サイトから申請手続きを行います。申請には、遺言書作成の意向や寄付先の情報などが求められます。
★助成対象費用: 遺言書作成に関わる専門家(弁護士、公証人、税理士など)の報酬が対象となります。ただし、詳細な条件や対象範囲については公式サイトでの確認が推奨されます。
★注意点:
助成金の申請は先着順で、予算に限りがあります。早めの申請が推奨されます。 また、申請には一定の条件や必要書類があります。詳細は公式サイトで確認してください。
遺贈寄付や遺言書作成に興味がある方は、この機会に検討してみてはいかがでしょうか。詳細や申請方法については、以下の公式サイトをご参照ください。
https://freewills.izo.or.jp/